ご家庭で育てたキウイを増やしたいと考えたとき、「挿し木」はとても魅力的な方法です。しかし、挑戦してみたもののうまくいかなかったり、そもそも何から手をつければ良いのか分からなかったりする方も少なくないでしょう。キウイの挿し木成功率は、いくつかのポイントを押さえるだけで大きく向上させることが可能です。
この記事では、キウイの挿し木に最適な時期や具体的な方法、さらには水挿しやペットボトルを利用した手軽なテクニックまで、あらゆる角度から解説します。また、人気のゴールドキウイの挿し木は可能なのか、挿し木で発根させるにはどうすれば良いのか、そして挿し木はどれくらいで発根しますか?といった多くの人が抱く疑問にもお答えします。
挿し木から元気な芽が出た後の正しい鉢上げ方法、反対に挿し木が失敗する理由は何ですか?という原因分析、さらには代替案としての接ぎ木についても触れていきます。この記事を読めば、漠然としていた「キウイの挿し木成功率は?」という問いに対する明確な答えと、成功への具体的な道筋が見えてくるはずです。
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キウイの挿し木に適した時期と基本的な方法
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成功率を上げるための具体的な管理テクニック
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挿し木が失敗する原因とその対策
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発根から鉢上げまでの重要なステップ
キウイの挿し木成功率を上げるための基本知識
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キウイの挿し木に最適な時期とは?
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初心者でもできる基本的な挿し木の方法
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ゴールドキウイの挿し木は可能か?
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手軽に試せる水挿しのやり方と注意点
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ペットボトルを活用した保湿管理
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そもそもキウイの挿し木成功率はどのくらい?
キウイの挿し木に最適な時期とは?
キウイの挿し木の成否を分ける最も大きな要因の一つが、作業を行う「時期」です。キウイの挿し木には、大きく分けて2つの適切なタイミングがあり、それぞれに特徴と注意点が存在します。
休眠枝挿し(1月〜2月)
休眠枝挿しは、キウイの木が活動を停止している冬の時期に行う方法です。具体的には、葉が全て落ち、枝の成長が完全に止まっている1月下旬から2月にかけてが最適期とされます。
この方法の最大のメリットは、挿し穂(挿し木に使う枝)が休眠状態にあるため、体力の消耗が少なく、土の中でじっくりと発根の準備を整えられる点にあります。また、病害虫の活動も少ない時期なので、管理が比較的容易です。
使用する枝は、前年に伸びた、ある程度硬化して木質化した枝を選びます。鉛筆程度の太さがあり、節と節の間が詰まっている充実した枝が理想的です。ただし、寒さが厳しい地域では、土が凍結して挿し穂が傷んでしまう可能性があるため、土壌の管理には注意が必要となります。
緑枝挿し(春〜梅雨:5月〜7月)
緑枝挿しは、キウイが活発に成長している時期に行う方法です。その年に新しく伸びた、まだ緑色で柔らかさが残る枝(緑枝)を使用します。最適な時期は、新梢が少し硬くなり始める5月下旬から、湿度が高く乾燥しにくい梅雨の時期にあたる7月上旬頃までです。
緑枝は成長エネルギーに満ちあふれているため、発根するスピードが速いのが最大のメリットです。条件が良ければ、休眠枝挿しよりも高い成功率を期待できます。
一方で、デメリットも存在します。緑枝には葉がついているため、葉からの水分蒸散が激しく、水切れを起こしやすい点です。挿し木をした後は、絶対に乾燥させないよう、こまめな水やりと湿度管理が成功の鍵を握ります。また、気温が高い時期なので、切り口から雑菌が入り、腐敗しやすいというリスクも伴います。
このように、どちらの時期にも一長一短があります。ご自身の管理スタイルや環境に合わせて、最適な時期を選ぶことが、成功への第一歩となります。
初心者でもできる基本的な挿し木の方法
キウイの挿し木は、正しい手順を踏めば初心者の方でも十分に成功させることができます。ここでは、最も一般的で成功しやすい「緑枝挿し」を例に、具体的な方法をステップバイステップで解説します。
1. 挿し穂の準備
まず、挿し木のもととなる「挿し穂」を用意します。 親木から、その年に伸びた元気の良い新しい枝を選びます。病気や害虫の被害がなく、太さが鉛筆くらいのものが適しています。花や実がついている枝は、栄養がそちらに使われてしまうため発根しにくく、避けるのが無難です。
選んだ枝を、カッターナイフや清潔なハサミで切り取ります。作業中は挿し穂が乾燥しないよう、切り取ったらすぐにバケツの水に浸けて、2〜3時間ほど十分に水を吸わせます(水揚げ)。このとき、水に市販の発根促進剤(メネデールなど)を規定量加えると、成功率がさらに高まります。
2. 挿し穂の調整
水揚げが終わったら、いよいよ挿し穂を適切な長さに調整します。 長い枝を、2〜3節(葉がついている部分)が一つの単位になるように切り分けます。全体の長さが10cm〜15cm程度になるのが目安です。
次に、各挿し穂の調整を行います。
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一番下の節: 土に挿す部分になります。この節についている葉は、付け根からきれいに切り落とします。ここが発根の起点となります。
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切り口: 一番下の節のすぐ下を、カッターナイフで斜めにスパッと切ります。断面積を広くすることで、吸水効率が上がり、発根が促されます。
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上の葉: 挿し穂には葉を1〜2枚残します。葉が大きすぎると、そこからの水分蒸散が激しくなり、水切れの原因となります。そのため、残す葉は元の大きさの半分から3分の1程度にハサミでカットしてください。これは、挿し穂が乾燥して枯れるのを防ぐための非常に重要な作業です。
3. 挿し床の準備と挿し木
挿し穂を挿すための土(挿し床)を用意します。 プランターや育苗ポットに、清潔な用土を入れます。挿し木専用の土や、水はけと水もちのバランスが良い赤玉土(小粒)などがおすすめです。肥料分が含まれている土は、切り口が腐る原因になるため使用を避けてください。
用土を湿らせたら、あらかじめ指や棒で挿し穴を開けておきます。そこに、調整した挿し穂を1本ずつ丁寧に挿していきます。深さは、挿し穂の一番下の節が土に埋まるくらいが目安です。挿し終えたら、周囲の土を軽く寄せて挿し穂を安定させます。
4. 挿し木後の管理
挿し木が成功するかどうかは、この後の管理にかかっています。 挿し木をしたプランターは、直射日光が当たらない、明るい日陰に置いてください。風通しが良く、涼しい場所が最適です。
最も大切なのは、絶対に土を乾燥させないことです。毎日、朝か夕方の涼しい時間帯に、霧吹きやジョウロで優しく水を与えます。特に最初の1ヶ月は、挿し穂が生き残るかどうかの分かれ目です。葉が緑色を保ち、落ちなければ、発根している可能性が高いと言えます。
ゴールドキウイの挿し木は可能か?
近年、スーパーマーケットでも人気が高まっている甘みの強い「ゴールドキウイ」。ご家庭で栽培されている方の中には、このゴールドキウイを挿し木で増やしたいと考える方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言うと、ゴールドキウイの系統の品種を挿し木で増やすこと自体は、技術的には可能です。緑系のキウイと同様に、緑枝挿しや休眠枝挿しの方法で発根させることができます。しかし、これにはいくつかの重要な注意点と、知っておくべき背景が存在します。
品種登録と法律(種苗法)
まず最も注意すべきは、多くの市販されているゴールドキウイの品種が「品種登録」されているという点です。品種登録された植物は、育成者の権利を守るため、「種苗法」という法律によって保護されています。
これは、育成者の許可なく、登録品種を営利目的(販売など)で増殖することが禁じられていることを意味します。家庭内で楽しむために1〜2本増やす程度であれば問題視されないケースが多いですが、増殖した苗を他人に譲渡したり販売したりする行為は、法律に抵触する可能性があります。
ご自身が栽培しているゴールドキウイの品種名を確認し、それが登録品種であるかどうかを農林水産省のデータベースなどで確認しておくことをお勧めします。
栽培上の特性
次に、栽培上の観点からの注意点です。 一般的に、キウイは接ぎ木で増やされた苗が販売されています。これは、病気に強く、生育旺盛な台木(根の部分)に、目的の品種(果実がなる部分)を接ぐことで、より強健で育てやすい苗木にするためです。
挿し木で増やした場合、その木は台木を持たない「自根」の状態になります。品種によっては、自根だと根の張りが弱かったり、特定の土壌病害に弱かったりする可能性があります。そのため、接ぎ木苗に比べて生育が思わしくなかったり、デリケートな管理が求められたりすることがあります。
これらの点を理解した上で、あくまで個人で楽しむ範囲で挑戦するのであれば、ゴールドキウイの挿し木は栽培の楽しみを広げる一つの方法と言えるでしょう。ただし、挿し木を行う際は、その品種の背景にある法律や栽培上の特性を十分に考慮することが大切です。
手軽に試せる水挿しのやり方と注意点
「土の準備が少し面倒」「挿し木が成功するかどうか、まずは気軽に試してみたい」という方におすすめなのが「水挿し」という方法です。土を使わず、水だけで発根を促すシンプルな手法で、発根の様子を直接観察できるのが大きな魅力です。
水挿しの具体的な手順
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挿し穂の準備: 基本的な挿し木の方法と同様に、元気の良い枝を選び、10cm〜15cmの長さにカットします。一番下の節の葉を取り除き、上の葉は半分ほどの大きさに切っておきます。切り口は斜めに鋭くカットしてください。
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容器の準備: 透明なガラス瓶やコップ、ジャムの空き瓶など、中が見える容器を用意します。これにより、水の汚れ具合や発根の様子が一目で確認できます。
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水に挿す: 容器に水を入れ、挿し穂の切り口が2〜3cm浸かるように挿します。このとき、葉が水に浸かってしまうと腐敗の原因になるため、水に浸かるのは茎の部分だけになるよう注意しましょう。
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管理: 容器は、直射日光の当たらない明るい室内に置きます。キッチンやリビングの窓辺などが適しています。
水挿し成功のための重要なポイント
水挿しを成功させる上で最も大切なのは、「水の管理」です。
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水の交換: 水は毎日必ず交換してください。水中の酸素が不足したり、雑菌が繁殖したりすると、切り口が腐ってしまい、発根に至りません。新鮮な水を保つことが、成功への絶対条件です。
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発根促進剤の利用: 水を交換する際に、市販の発根促進剤(メネデールなど)を数滴加えると、発根が促されやすくなります。
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カルスの確認: しばらくすると、切り口の周りが白くモコモコとした塊で覆われてきます。これは「カルス」と呼ばれる細胞の集まりで、発根の前兆です。カルスが形成されれば、成功は目前です。
水挿しのメリットとデメリット
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メリット:
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土やプランターが不要で、手軽に始められる。
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発根の様子を直接観察できるため、楽しい。
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管理がシンプル(毎日の水換えのみ)。
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デメリット:
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土での挿し木に比べて、発根後の根が水中の環境に慣れてしまっているため、土への植え替え(鉢上げ)で傷みやすい。
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長期間水に浸けておくと、根が酸素不足になりやすい。
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水挿しで無事に発根したら、根が数本、5cm程度の長さに伸びたタイミングで、優しく土に植え替えてあげましょう。植え替え直後は特にデリケートなので、しばらくは日陰で養生させることが大切です。
ペットボトルを活用した保湿管理
キウイの挿し木、特に葉からの水分蒸散が激しい「緑枝挿し」において、成功率を格段に上げるための裏ワザが「ペットボトル」の活用です。これは「密閉挿し」とも呼ばれる方法で、ペットボトルを使って挿し穂の周りを温室のような高湿度環境に保つテクニックです。
なぜペットボトルが有効なのか?
挿し木が失敗する最大の原因の一つは「乾燥」です。根が出ていない挿し穂は、土から十分に水を吸い上げることができません。それにもかかわらず、葉からはどんどん水分が蒸発していきます。この水分の収支バランスが崩れ、吸い上げる量より蒸発する量が多くなると、挿し穂は枯れてしまいます。
ペットボトルで挿し穂を覆うことで、内部の空気の動きが少なくなり、湿度をほぼ100%に近い状態に保つことができます。これにより、葉からの水分の蒸散を最小限に抑え、挿し穂が自身の力で発根するまでの間、体力を温存させてあげることが可能になります。
ペットボトル温室の作り方と使い方
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準備するもの:
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2Lの炭酸飲料用ペットボトル(丸形で透明なものが観察しやすくおすすめ)
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カッターナイフまたはハサミ
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ペットボトルの加工:
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ペットボトルの下から3分の1くらいのところを、カッターナイフで水平に切断します。これで、下が鉢(土を入れる部分)、上がフタ(温室のドーム部分)になります。
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鉢になる部分の底には、水抜き用の穴をキリなどで数カ所開けておきます。
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挿し木:
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加工したペットボトルの下部分に、赤玉土などの清潔な用土を入れます。
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通常の手順で準備した挿し穂を土に挿します。
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水をたっぷり与え、土をしっかりと湿らせます。
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密閉:
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ペットボトルの上部分をフタとしてかぶせます。これでミニ温室の完成です。
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フタのキャップは閉めたままにして、内部の湿度を保ちます。
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管理:
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直射日光の当たらない、明るい日陰に置きます。直射日光が当たると、内部が高温になりすぎて挿し穂が蒸れてしまうため、絶対に避けてください。
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基本的には、密閉されているため水やりの必要はほとんどありません。土の表面が乾いてきたと感じたときだけ、フタを開けて水を与えます。
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数日に一度、キャップを数分間開けて換気すると、カビの発生を抑えることができます。
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この方法を使えば、特に梅雨時期の緑枝挿しで驚くほど高い成功率を期待できます。新しい芽が伸びてきても、すぐにフタを開けずに、根がしっかり張るまで1ヶ月以上は我慢強く待ちましょう。
そもそもキウイの挿し木成功率はどのくらい?
「挑戦してみたいけれど、実際どのくらいの確率で成功するのだろう?」というのは、誰もが気になる点だと思います。キウイの挿し木の成功率は、一概に「何パーセント」と言い切れるものではありません。なぜなら、その確率は様々な要因によって大きく変動するからです。
成功率を左右する主な要因
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時期: 前述の通り、「休眠枝挿し」と「緑枝挿し」では成功率が異なります。一般的には、湿度が高く成長期にあたる梅雨時の「緑枝挿し」の方が、成功率は高い傾向にあります。適切な管理を行えば、70%以上、場合によってはそれ以上の成功も期待できます。
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品種: キウイには多くの品種がありますが、品種ごとの生命力にも差があります。特に、近年注目されている「ベビーキウイ(サルナシ)」の系統は非常に生命力が強く、夏場の緑枝挿しではほぼ100%に近い成功率になることもあると言われています。一方で、一部のデリケートな品種では、発根が難しいケースもあります。
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挿し穂の状態: 親木のどの部分から採取した枝か、という点も影響します。若くて元気の良い、根元に近い部分から採取した充実した枝の方が、発根能力は高いです。逆に、細すぎる枝や、花芽がついてしまった枝、株の先端部分の枝は発根しにくい傾向が見られます。
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管理方法: 最も成功率を左右するのが、挿し木後の管理です。特に「湿度」と「温度」の管理は決定的です。乾燥させないこと、直射日光を避けること、清潔な用土を使うこと、これらの基本が守られているかどうかで、結果は大きく変わってきます。ペットボトルなどを活用した密閉挿しは、この管理を容易にし、成功率を飛躍的に高める有効な手段です。
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発根促進剤の使用: 発根促進剤を使用するかどうかでも、成功率は変わります。必須ではありませんが、使用することで発根を促し、失敗のリスクを減らす効果が期待できます。
これらの要因を総合すると、適切な時期に、健康な挿し穂を使い、丁寧な管理を行えば、キウイの挿し木は決して難しいものではなく、50%〜70%以上の成功率は十分に目指せると言えるでしょう。特にベビーキウイであれば、初心者の方でも非常に高い確率で成功を体験できる可能性があります。
キウイの挿し木成功率を高める実践テクニック
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挿し木で発根させるには?カルス形成が鍵
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挿し木はどれくらいで発根しますか?
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挿し木から芽が出た後の管理
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発根後の正しい鉢上げ方法
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なぜ?挿し木が失敗する理由は何ですか?
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挿し木が難しい場合の接ぎ木という選択肢
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時期と管理で変わるキウイの挿し木成功率
挿し木で発根させるには?カルス形成が鍵
挿し木で枝から根が出てくる現象は、植物が持つ驚異的な再生能力の現れです。その不思議なプロセスの第一歩であり、成功への重要なサインとなるのが「カルス」の形成です。
カルスとは何か?
カルスとは、植物が傷ついたときに、その傷口を保護するために形成する、未分化な細胞の塊のことです。人間で言えば「かさぶた」のような役割を果たしますが、その性質は大きく異なります。
人間のかさぶたは、傷が治れば剥がれ落ちて終わりですが、植物のカルスは「万能細胞(iPS細胞のようなもの)」としての性質を持っています。つまり、カルスは周囲の環境に応じて、根や芽、葉といった様々な器官に変化(分化)することができるのです。
挿し木の場合、枝の切り口は土や水の中に置かれます。この環境を植物体自身が感知し、「ここでは水分や養分を吸収するために根が必要だ」と判断します。すると、傷口を覆ったカルスの中から、新しい根が作り出されてくるのです。このため、カルスの形成は、発根が順調に進んでいることを示す非常にポジティブなサインと言えます。
カルスをうまく形成させるためのポイント
カルスの形成を促し、スムーズな発根へとつなげるためには、いくつかのポイントがあります。
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鋭利な切り口: 挿し穂の切り口を、よく切れるカッターナイフなどでスパッと斜めに切ることが大切です。ハサミで潰すように切ってしまうと、道管(水の通り道)が塞がり、細胞が傷んでカルスの形成が阻害されることがあります。切り口の面積を広く、そしてきれいに保つことが、効率的な吸水とカルス形成の第一歩です。
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適切な水分と湿度: カルス細胞が活発に分裂・増殖するためには、適度な水分と湿度が必要です。土が乾燥したり、逆に過湿で切り口が腐ったりすると、カルスはうまく形成されません。土の表面が乾かない程度に湿度を保つ管理が求められます。
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清潔な環境: 切り口は雑菌に非常に弱い部分です。使用する用土や器具は清潔なものを選び、腐敗を防ぐことが重要です。腐敗が始まると、カルスが形成される前に組織が壊死してしまいます。
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動かさない: 一度挿した挿し穂は、発根が確認できるまで、むやみに動かしたり抜いたりしないようにしましょう。せっかく形成されかかったカルスや、出始めのデリケートな根が傷ついてしまう原因になります。
これらのポイントを意識して管理することで、切り口に白いモコモコとしたカルスが現れるのを確認できるはずです。これこそが、挿し木が成功に向かって進んでいる確かな証拠なのです。
挿し木はどれくらいで発根しますか?
挿し木をしてから、毎日「まだかな?」と土の中を覗きたくなる気持ちは、誰もが経験するものです。発根までにかかる期間は、いくつかの条件によって変動しますが、おおよその目安を知っておくことで、焦らずに管理を続けることができます。
発根までの期間の目安
一般的に、キウイの挿し木が発根するまでにかかる期間は、**約1ヶ月から2ヶ月(4週間〜8週間)**が目安とされています。
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緑枝挿しの場合: 成長が活発な5月〜7月に行う緑枝挿しは、発根スピードが速い傾向にあります。条件が良ければ、3〜4週間ほどでカルスが形成され始め、6〜7週間もすれば発根が確認できることが多いです。特にベビーキウイのような生命力の強い品種では、1ヶ月もかからずに発根が始まるケースもあります。
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休眠枝挿しの場合: 冬の1月〜2月に行う休眠枝挿しは、じっくりと時間をかけて発根します。土の温度が低い間はほとんど変化がありませんが、春になり地温が上昇してくると、活動を開始します。発根が確認できるのは、早くても2ヶ月以上先、春の彼岸を過ぎた頃になるのが一般的です。
発根のサイン
土の中は見えないため、本当に発根しているか不安になることもあるでしょう。しかし、地上部にも発根のサインは現れます。
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新芽の伸長: 最も分かりやすいサインは、新しい芽が伸びてくることです。挿し穂の節から、小さな緑色の新芽が顔を出し、それが少しずつ大きくなってきたら、土の中で根が活動を始めた可能性が非常に高いです。
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葉の状態: 緑枝挿しの場合、挿したときについていた葉が、1ヶ月以上経っても青々とした状態を保ち、落ちていなければ、順調に給水ができている証拠、つまり発根している可能性が高いと言えます。
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軽く引いてみる(非推奨): 挿し穂を軽く、本当にごく軽く上に引っぱってみて、少し抵抗を感じるようであれば、根が土に張っている証拠です。ただし、この方法は出始めの繊細な根を傷つけてしまうリスクが非常に高いため、基本的には行わない方が賢明です。新芽の伸長など、他のサインで判断するのが安全です。
発根までの期間には個体差があるため、同じ日に挿したものでも、発根のタイミングは異なります。焦らず、気長に、そして丁寧な管理を続けることが、成功への一番の近道です。
挿し木から芽が出た後の管理
挿し穂から小さな新しい芽が顔を出す瞬間は、挿し木をしていて最も嬉しい瞬間の一つです。しかし、ここで安心してはいけません。「芽が出た=成功」と判断して管理方法を急に変えてしまうと、かえって失敗につながることがあります。
「芽が出た」は「発根した」とは限らない
まず知っておくべき重要なことは、新芽の伸長は、必ずしも十分な発根を意味するわけではない、ということです。
植物の枝には、発根する前から、ある程度の栄養分が蓄えられています。挿し穂は、その蓄えられたエネルギーだけを使って、一時的に芽を出すことがあるのです。この段階ではまだ根が十分に張っておらず、水分をしっかり吸い上げる能力はありません。
この状態で、慌てて日当たりの良い場所に移したり、肥料を与えたりすると、急激な環境の変化に耐えられず、一気に枯れてしまうことがあります。葉からの水分の蒸散に、根からの給水が追いつかなくなってしまうのです。
芽が出た後の正しい管理方法
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管理場所は変えない: 新芽が出始めても、少なくともそこからさらに1ヶ月程度は、これまで通り「直射日光の当たらない明るい日陰」での管理を続けてください。根が土の中でしっかりと張り、新しい環境に適応できるだけの力を蓄えるための重要な期間です。
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湿度管理を続ける: ペットボトルなどで密閉挿しをしている場合も、すぐにフタを外してはいけません。急に湿度を下げると、葉からの蒸散が一気に増えてしまいます。フタのキャップを少しずつ開ける時間を長くするなどして、徐々に外の湿度に慣らしていく「順化」の期間を設けましょう。
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肥料は与えない: 発根して間もないデリケートな根は、肥料分に触れると「肥料焼け」を起こして傷んでしまうことがあります。この段階では、肥料は絶対に与えないでください。必要な養分は、まだ挿し穂自身が持っています。
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水やりは継続: 土の表面が乾かないように、優しい水やりは継続します。ただし、過湿は根腐れの原因になるため、土の状態をよく観察しながら行いましょう。
芽が出てからが、本当の意味で新しい苗木を育てるスタートラインです。焦らず、植物のペースに合わせて、じっくりと見守ってあげることが、その後の健全な成長につながります。新芽が数cm伸び、葉がしっかりと展開してきたら、いよいよ次のステップである「鉢上げ」を検討するタイミングとなります。
発根後の正しい鉢上げ方法
挿し木から新芽が伸び、葉もしっかりと展開してきたら、いよいよ独立した苗木として育てるための「鉢上げ(鉢増し)」の作業に入ります。これは、育苗ポットやプランターで密集して育った苗を、それぞれ個別の鉢に植え替える作業です。この作業を適切なタイミングと方法で行うことが、その後の生育を大きく左右します。
鉢上げの最適なタイミング
鉢上げのタイミングを見極めることが非常に重要です。早すぎても遅すぎても、苗にダメージを与えてしまいます。
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根の状態: 最も確実な判断基準は「根」の状態です。ポットの底穴から白い根が見え始めたり、ポットをそっと外したときに、土の周りに根がぐるりと回っている(根鉢が形成されている)状態が、最適なタイミングです。
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地上部の状態: 目安として、新しく伸びた枝が10cm〜15cm程度になり、葉が数枚しっかりと硬化している状態です。
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時期: 緑枝挿しの場合、挿し木から約2〜3ヶ月後が目安となります。休眠枝挿しの場合は、春に芽吹いてから同様に成長したタイミングです。
鉢上げが遅すぎると、ポットの中で根が詰まり(根詰まり)、成長が停滞してしまうため注意が必要です。
鉢上げの手順
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準備するもの:
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新しい鉢: 3号〜4号(直径9cm〜12cm)程度の大きさのビニールポットや駄温鉢を用意します。大きすぎる鉢は、土が乾きにくく過湿になり、根腐れの原因になるため避けてください。
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用土: 水はけと水もちの良い、清潔な培養土を用意します。市販の果樹用や草花用の培養土で問題ありません。
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鉢底石と鉢底ネット: 水はけを良くするために用意します。
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苗をポットから取り出す:
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鉢上げの前日、水やりを控えて土を少し乾かしておくと、ポットから抜きやすくなります。
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ポットの側面を軽く揉んで土とポットを剥がし、苗の根元を優しく持ちながら、逆さにしてそっと引き抜きます。このとき、絶対に根を傷つけないように、細心の注意を払ってください。根鉢は崩さないのが基本です。
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新しい鉢に植え付ける:
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新しい鉢の底に鉢底ネットを敷き、鉢底石を入れます。
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用土を鉢の3分の1ほど入れ、苗を中央に置きます。
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苗の周りから、隙間ができないように用土を足していきます。ウォータースペース(鉢の縁から2〜3cm下の空間)を確保してください。
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植え付けたら、鉢の底から水が流れ出るまで、たっぷりと水を与えます。
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鉢上げ後の管理:
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鉢上げ直後の苗は、植え替えのダメージで非常にデリケートな状態です。最低でも1週間は、これまでと同じく直射日光の当たらない明るい日陰で管理し、環境に慣れさせます(養生)。
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その後、徐々に日光に当てる時間を長くしていき、最終的には日当たりの良い場所での管理に移行します。
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この鉢上げ作業を丁寧に行うことで、挿し木から育てた苗は、本格的な成長軌道に乗ることができます。
なぜ?挿し木が失敗する理由は何ですか?
一生懸命管理したにもかかわらず、挿し木がうまくいかずに枯れてしまうと、がっかりしてしまいます。しかし、失敗には必ず原因があります。その理由を理解しておくことで、次の挑戦での成功率を格段に高めることができます。
挿し木が失敗する主な理由は、大きく分けて以下の4つに集約されます。
1. 水分管理の失敗(乾燥または過湿)
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乾燥: 最も多い失敗原因です。前述の通り、根のない挿し穂は水分を十分に吸えません。葉からの蒸散量に給水量が追いつかず、水分不足で枯れてしまいます。特に緑枝挿しでは致命的です。
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対策: 挿し木後は絶対に土を乾かさない。ペットボトルなどを利用した密閉挿しで湿度を保つ。葉を小さくカットして蒸散を抑える。
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過湿(根腐れ): 乾燥を恐れるあまり、水をやりすぎてしまうケースです。常に土が水でびしょびしょの状態だと、土中の酸素が不足し、切り口や新しく出た根が呼吸できずに腐ってしまいます。
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対策: 水はけの良い用土(赤玉土など)を使う。鉢底に穴がしっかり開いているか確認する。土の表面が少し乾き始めてから水を与えるなど、メリハリをつける。
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2. 挿し穂(枝)の選択ミス
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不適切な枝: 細すぎる、弱々しい枝、病害虫の被害がある枝、花芽がついている枝などは、発根するための体力が不足しており、成功率が低くなります。
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対策: その年に伸びた、鉛筆程度の太さがある、元気で充実した枝を選ぶ。節と節の間が詰まっているものが良い。
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鮮度の低下: 親木から切り取った後、長時間放置して乾燥させてしまうと、挿し穂の活力が失われ、発根能力が著しく低下します。
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対策: 枝を切り取ったら、すぐに水に浸けて「水揚げ」を行う。
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3. 環境の不適合
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直射日光: 強い日差しは、葉からの蒸散を促進し、乾燥を招きます。また、土の温度が上がりすぎて、挿し穂が傷む原因にもなります。
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対策: 必ず、直射日光の当たらない「明るい日陰」で管理する。
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不潔な環境: 古い土を使い回したり、汚れた器具を使ったりすると、切り口から雑菌が侵入し、腐敗の原因となります。
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対策: 清潔な用土(新品の赤玉土や挿し木用土)を使う。カッターやハサミは使用前によく洗うか、火で炙って消毒する。
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4. 時期のミスマッチ
キウイの成長サイクルに合わない時期に挿し木をしても、成功は望めません。真夏や真冬など、植物にとって過酷な時期は避けるべきです。
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対策: 発根に適した「休眠枝挿し(1月〜2月)」または「緑枝挿し(5月〜7月)」の時期を厳守する。
これらの失敗原因を知り、一つひとつ丁寧に対策を講じることが、キウイの挿し木を成功させるための確実な道筋となります。
挿し木が難しい場合の接ぎ木という選択肢
挿し木に何度か挑戦してもうまくいかない場合や、より確実に、そしてより強健な苗木を育てたい場合には、「接ぎ木(つぎき)」という別の増殖方法も選択肢に入ります。
接ぎ木とは?
接ぎ木とは、2つ以上の異なる植物を人為的に合体させ、一つの個体として育てる技術のことです。具体的には、根の部分となる「台木(だいぎ)」と、地上部(枝や葉、果実)となる「穂木(ほぎ)」を、それぞれの切断面がぴったりと合うように接合します。
キウイ栽培では、病気に強く生育旺盛な品種を台木とし、そこに果実の品質が良い品種を穂木として接ぐのが一般的です。市販されている苗木のほとんどは、この接ぎ木によって生産されています。
接ぎ木のメリット
挿し木と比べた場合の接ぎ木のメリットは、主に以下の点が挙げられます。
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高い成功率と確実性: 挿し木が「発根するかしないか」という不確実性を伴うのに対し、接ぎ木は技術さえ習得すれば、活着(接合部がくっつくこと)する確率が非常に高く、より確実に苗を増やすことができます。
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強健な苗になる: 病害虫への耐性が強い台木を使うことで、栽培が難しいデリケートな品種であっても、丈夫で育てやすい苗にすることが可能です。根張りが良くなるため、生育も旺盛になります。
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開花・結実が早い: 挿し木苗に比べて、成木になるまでの期間が短く、早くから花を咲かせ、実をつけ始める傾向があります。
接ぎ木のデメリットと注意点
一方で、接ぎ木には挿し木にはない難しさや手間も存在します。
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技術的な難易度: 挿し木に比べて、高度な技術と知識が要求されます。台木と穂木の形成層(細胞分裂が活発な層)をぴったりと合わせる必要があり、初心者には少しハードルが高いかもしれません。
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台木の準備が必要: 穂木だけでなく、土台となる台木を別途用意する必要があります。台木は、実生(種から育てる)や挿し木で事前に育てておかなければなりません。
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適切な時期が限られる: 接ぎ木も、成功しやすい時期が限られています。一般的には、木が休眠から覚める春先の3月頃が適期とされます。
このように、接ぎ木は挿し木よりも確実性が高い反面、手間と技術が必要な上級者向けの方法と言えます。もし挿し木での増殖に限界を感じた場合や、本格的な果樹栽培を目指したい場合には、このような方法があることも知っておくと、栽培の幅が広がるでしょう。
まとめ 時期と管理で向上するキウイの挿し木成功率
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キウイの挿し木成功率は時期、品種、管理方法で大きく変動する
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最適な時期は冬の「休眠枝挿し」と初夏の「緑枝挿し」の2回
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緑枝挿しは発根が速いが、水分管理がより重要になる
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挿し穂は元気で充実した、その年に伸びた新しい枝を選ぶ
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切り口を斜めに切り、葉を小さくカットして水分の蒸散を防ぐ
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用土は肥料分を含まない清潔な赤玉土などが適している
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挿し木後は直射日光の当たらない明るい日陰で管理する
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成功の最大の鍵は、土を絶対に乾燥させないこと
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ペットボトルを使った密閉挿しは湿度を保ち成功率を飛躍的に高める
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発根の前兆として切り口に「カルス」という細胞の塊ができる
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発根までの期間は緑枝挿しで約1〜2ヶ月が目安
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新芽が出てもすぐには発根したとは限らず、管理場所は変えない
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ポットの底から根が見え始めたら、一回り大きな鉢への「鉢上げ」を行う
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失敗の主な原因は「乾燥」「過湿」「不適切な挿し穂」「環境」である
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挿し木が難しい場合は、より確実な「接ぎ木」という方法もある