
こんにちは。Garden Stories and Life、運営者の「ハル」です。
家庭菜園でいちごを育てていると、「もっと早く、たくさん収穫したいな」とか「春先の遅霜や鳥からどうやって守ろう…」って悩みますよね。そんな時に気になるのが、いちごの露地栽培における「トンネル技術」じゃないかなと思います。僕も最初は、ただビニールをかければいいのかな?くらいに思っていたんですが、調べてみるとこれがなかなか奥が深いんですよね。
単に霜よけや保温をするだけじゃなく、高品質ないちごを安定的に、しかも通常より早く収穫するための積極的な技術なんだなと。でも、ビニールや不織布といった資材の選び方から、トンネルの具体的な作り方、栽培時期に合わせた管理、そして一番難しそうな日々の換気の方法まで、気になることがたくさん出てきます。特に春先の管理を間違うと、高温障害になったり、病気や害虫、例えばナメクジなんかにやられてしまうリスクもあるみたいで…。
この記事では、いちごの露地トンネル栽培について、僕が調べたり学んだりした基本的な知識や、失敗を減らすための管理のコツを、できるだけわかりやすく、深掘りしてまとめてみようと思います。
記事のポイント
- 露地トンネル栽培の本当の目的とメリット
- 栽培環境に適した品種や必要な資材の賢い選び方
- 失敗しないトンネルの設置方法と、毎日の換気作業を楽にするコツ
- 時期別の具体的な管理作業と、注意すべき病害虫対策
いちごの露地栽培 トンネルの基本と準備
まずは、いちごの露地栽培でトンネルを使うって、どういうことなのか。その基本と、始める前に必要な準備について見ていきましょう。この技術は、単なる「防寒」だけじゃなく、「促成栽培(生育を早めること)」や「品質向上」といった、より積極的な目的を持っています。計画的に準備することが、春の美味しい収穫につながる第一歩ですね。
トンネル栽培に適した品種の選び方

いちごには本当にたくさんの品種がありますが、トンネル栽培をするなら、その環境に適したものを選ぶのが成功の鍵みたいです。なぜなら、トンネルの中は、どうしても「高温・多湿」という、いちごにとっては少し過酷な(そして病気にとっては好都合な)環境になりがちだからです。
普通の露地栽培以上に病気のリスクが高まることを想定して、品種選びの段階で対策を打っておく。これがすごく大事なんですね。
そこで最重要視したいのが、「耐病性」です。特に、高温多湿で発生しやすいうどんこ病や灰色かび病に強いとされる品種がおすすめです。
例えば、昔からの定番だと「宝交早生」は露地栽培向きとして有名ですね。ただ、最近は家庭菜園向けに、さらに栽培しやすさを追求した品種がたくさん出ています。
品種選びの3つの視点
- うどんこ病耐性で選ぶ「らくなりイチゴ」や「ドルチェベリー」のように、パッケージで「うどんこ病耐性」を明確にうたっている品種は、やはり管理がしやすいと思います。この病気はトンネル栽培で一番の悩みどころになることが多いので、最初からリスクを減らせるのは大きなメリットですね。
- 果実の硬さで選ぶ東京都が開発した「東京おひさまベリー」という露地専用品種があるんですが、これは果実が「やや硬い」のが特徴だそうです。果実が硬いと、多湿環境でも傷みにくく、収穫期の大敵である灰色カビ病の発生が少なくなるという、トンネル栽培にとって理想的な特性を持っています。
- 栽培地域や目的で選ぶ例えば、寒冷地なら「豊雪姫」のように、その土地の気候に合った品種を選ぶのも大切です。また、「ドルチェベリー」や「らくなりイチゴ」は四季なり性でもあるので、管理がうまくいけば春だけでなく秋にも収穫を楽しめるかもしれません。
自分の栽培環境(日当たり、風通し)や、どれくらい毎日お世話(特に換気)ができるかを考えて、最適な品種を選んでみてください。
必要な資材とビニール・不織布の使い分け

トンネル栽培を始めるには、いくつか専用の資材が必要です。ほとんどはホームセンターの園芸コーナーで揃えられるものばかりですね。
準備する主な資材リスト
- トンネル支柱:畝(うね)の幅に合わせてアーチ状にするポールです。FRP(繊維強化プラスチック)製やグラスファイバー製の弾性ポール(「ダンポール」などの商品名で売られています)が、しなやかで強度もあって使いやすいと思います。
- 被覆資材(ビニール or 不織布):これが一番の悩みどころかも。それぞれの特性を理解して使い分けるのがキモです。
- 留め具(パッカー):被覆資材を支柱にパチンと固定するためのクリップです。支柱の太さ(直径)に合ったサイズを選んでください。
- 留め具(その他):資材の裾や端を地面に固定するためのU字ピンやマルチ押さえなど。
ビニールと不織布、どう使い分ける?
一番大事なのが、ビニールフィルムと不織布(ふしょくふ)の使い分けです。目的によって選ぶべきものが変わってきます。
【資材比較】ビニールフィルム vs 不織布
ビニールフィルム(農PO、農ポリなど)
- メリット:保温性が抜群に高いです。光もよく通すので、トンネル内の温度をしっかり上げることができます。2月頃から「春トンネル」を設置して、生育を早める(促成)目的には必須の資材ですね。
- デメリット:密閉性が高すぎて、晴れた日は内部が急激に高温(35℃以上)になります。通気性も一切ないので、毎日の換気作業を怠ると、高温障害や蒸れによる病気の発生に直結します。
- ハルの豆知識:ビニールには「農ビ(塩化ビニール)」や「農ポリ(ポリエチレン)」、「農PO(ポリオフィン)」などの種類があります。農POが比較的丈夫でべたつきにくく、2~3年使えるものもあるので、家庭菜園でも扱いやすいかなと思います。
不織布(ふしょくふ)
- メリット:とても軽く、最大の特徴は通気性と通水性があることです。そのため、ビニールほど高温になりすぎず、「蒸れる」心配がありません。換気の手間を極力減らしたい場合や、霜よけ・防寒が主な目的ならこちらが適しています。
- デメリット:保温性はビニールに劣ります。なので、生育をグンと早める「促成効果」は低めです。「秋トンネル」や、防虫ネットの代わり、あるいは支柱なしで直接作物にかける「べた掛け」にも転用できます。
結論として、「2月頃からしっかり保温して、収穫を1日でも早めたい!」という場合はビニール。「換気作業は自信がないから、霜よけと防寒、鳥よけがメインかな」という場合は不織布、という感じで使い分けるのが良さそうです。
トンネルの作り方と設置のコツ

資材が揃ったら、いよいよ設置です。ここで手を抜くと、ちょっとした強風で飛ばされたり、後の管理がものすごく大変になったりします。丁寧に作業するのが大事ですね。
基本的な手順
- 支柱を立てる:畝の両サイドに、トンネル支柱を約40cm間隔で、同じ高さのアーチ状になるように深く突き立てます。この間隔が広すぎると、被覆資材がたるんで風でバタついたり、雨水が溜まったりする原因になるので、面倒でもしっかり測るのがおすすめです。
- 骨組みを補強する:(推奨)アーチの頂点に沿って、1本の弾性ポールを横に渡し、各支柱とパッカーで固定します。いわば「背骨」を入れるイメージですね。これにより、骨組み全体の強度が格段に上がります。
- 被覆する:骨組みの上から被覆資材(ビニールなど)をかけます。
- 固定する:両サイドの裾(すそ)を土でしっかり埋めるか、U字ピンやマルチ押さえなどで固定します。畝の両端は、資材を絞るようにして折りたたみ、風が入らないようにピンや土でしっかりと密閉します。
【最重要推奨】換気作業が激的に楽になる「観音開き」設置
春トンネル(ビニール)の場合、「日中は裾を開けて換気し、夕方は閉じて保温する」という毎日の作業が必須です。でも、上記の手順4で裾を土に埋めてしまうと、この作業が事実上不可能というか、めちゃくちゃ大変になりますよね。
そこで、換気作業を前提とした「観音開き」と呼ばれる設置方法を、僕は強く推奨したいです。
- 1枚目の被覆資材を、片側からトンネルの頂上を越えて、全体の2/3程度を覆うように掛けます。(裾と両端は固定)
- 2枚目の被覆資材を、反対側から同様に掛け、頂上部で1枚目の資材と $20 \sim 30\mathrm{cm}$ 程度重ねます。(裾と両端は固定)
- 頂上部の重なった部分を、トンネルパッカーで数カ所(支柱のある場所で)留めて固定します。
たったこれだけです。日中の換気作業の際は、頂上のパッカーを外し、被覆資材をずらして開けるだけ。作業後は元に戻してパッカーで留めます。土を掘ったり埋めたりの手間が一切なくなり、毎日の換気作業が極めて効率的になりますよ。
栽培時期と年間の作業スケジュール

露地トンネル栽培は、いつ何をやるかが結構重要です。特に「秋トンネル」と「春トンネル」という2つの技術は、目的が全く違うので、その点を理解しておくと作業に迷いがなくなります。
ざっくりとした年間の流れを掴んでおくと安心ですね。
| 時期 | 主な作業 | トンネルの役割・目的 |
|---|---|---|
| 秋(9月~10月) | 苗の植え付け(定植) | (まだ使わない。しっかり根を張らせる) |
| 秋(10月上旬~12月) | (上級者向け:秋トンネル) | 花芽分化の促進(春以降の収量アップ) |
| 冬(11月~2月) | 1回目追肥(寒肥)、冬越し | (厳寒地では防寒・霜よけ) |
| 春(2月上~中旬) | 春トンネル設置、2回目追肥(芽出し肥) | 保温・生育促進(促成栽培) |
| 春(3月~4月) | 最重要:換気管理、ランナー除去、受粉作業 | 保温と換気、受粉昆虫の誘導 |
| 春(5月~6月) | 収穫!、鳥よけネット設置 | 雨よけ・鳥よけ(果実の保護) |
(※あくまで一般的な目安です。お住まいの地域や、その年の気候、選んだ品種によって作業時期は前後します。)
「秋トンネル」というのは、主にプロの生産者さんが行う上級技術で、花芽(花の元)が作られる期間を低温下でコントロールして、春以降の収穫量を増やすのが目的だそうです。
僕たち家庭菜園で主に活躍するのは、2月上~中旬に設置する「春トンネル」ですね。休眠から覚めるいちごをしっかり保温して、生育のスタートダッシュをかけさせる。これでマルチだけの露地栽培より2週間~1ヶ月も収穫が早まるわけです。そして、トンネルをかけると同時に、これから急成長するためのエネルギーとして2回目の追肥(芽出し肥)も忘れずに行うのが良いみたいです。
いちごの露地栽培 トンネルの重要管理術
さて、準備が整いトンネルを設置したら、いよいよ管理の本番です。トンネルは「設置したら終わり」じゃなくて、「設置してからが本当のスタート」です。特に春先は、密閉された空間の温度や湿度をどうコントロールするかが、収穫の量と質を決めると言っても過言ではありません。僕もここが一番の頑張りどころだなと思ってます。
最重要!春トンネルの換気の方法

春トンネル(特にビニール)の管理で、失敗の最大の原因になるのが「換気」だそうです。これを怠ったり、やり方を間違えたりすると、良かれと思ってかけたトンネルが逆効果になってしまいます。
換気をしない・間違うとどうなる?
- 高温障害:晴れた日の密閉したビニールトンネル内は、外が寒くても、日射で簡単に35℃、40℃と温度が上昇します。いちごは高温に弱く、 $30^{\circ}\mathrm{C}$ を超えると生育が鈍り、 $35^{\circ}\mathrm{C}$ を超えると高温障害を起こして生育が停止したり、最悪の場合、花が咲かなくなったりします。
- 病気のまん延:高温・多湿(蒸れ)の状態は、カビ系の病気、特に「うどんこ病」や「灰色かび病」にとって天国のような環境です。一度発生すると、トンネル内で一気に広がってしまいます。
- 受粉不良(奇形果の多発):4月以降、いちごの花が咲き始めてもトンネルを閉め切っていると、ミツバチなどの訪花昆虫が入れません。いちごは虫が受粉を手伝ってくれないと、キレイな形の実になりません。結果、受粉不全によるゴツゴツとした奇形果(変形果)だらけになってしまいます。
換気は、これらの最悪の事態を防ぐための、最も重要で毎日行うべき作業なんですね。
換気の基本ステップ
2月中旬にトンネルをかけてから最初の10日~半月くらいは、あえて密閉して内部の温度と湿度を高め、休眠から覚めたいちごに生育開始のスイッチを入れる「蒸し込み」という作業を行うこともあるそうです。
ですが、葉が本格的に伸び始めたら、いよいよ毎日の換気スタートです。
- 日中の換気:晴れた日は、朝(気温が上がりすぎる前)にトンネルの裾(すそ)を開けて、新鮮な空気を入れ替えます。前述の「観音開き」なら、頂上をずらすだけですね。
- 夜間の保温:気温が下がり始める夕方には、必ず裾を閉じて、夜間の冷え込みから株を守り、保温を行います。この「日中の換気」と「夜間の保温」の繰り返しが基本です。
プロレベルの変温管理
プロの農家さんは、生育ステージごと(つぼみの時期、開花の時期、実が大きくなる時期)に、トンネル内の温度計を見ながら、目標温度を $28^{\circ}\mathrm{C} \rightarrow 25^{\circ}\mathrm{C} \rightarrow 23^{\circ}\mathrm{C}$ のように少しずつ下げていく「変温管理」というのを行うそうです。生育が進むにつれて目標温度を下げることで、高品質な果実を作る技術ですね。
家庭菜園でそこまで厳密には難しくても、「開花時期は暑すぎ( $25^{\circ}\mathrm{C}$ 以上)に注意する」くらいは意識したいですね。トンネル内に最高・最低温度が記録できる温度計を1つ入れておくと、管理の目安になってすごく便利だと思います。
4月以降の「受粉」管理
4月になり、平均気温が上がってくると、いちごの開花が本格化します。この時期になったら、トンネル管理の最優先事項は「保温」から「受粉」へと切り替わります。
日中は、ミツバチなどの受粉昆虫が自由に出入りできるよう、トンネルのビニールを大きく開放します。この時期に受粉が不十分だと、本当に収穫できる実が極端に減ってしまいます。
もし、天候が悪く(雨や低温)てミツバチの活動が鈍い日が続く場合は、綿棒や柔らかい筆で花の中央(雌しべ)を優しくなでてあげる「人工授粉」を行うと、結実率が上がり、形の良い果実が増えますよ。
露地栽培の水やりと追肥の時期

トンネル栽培は、ビニールが雨を完全にシャットアウトしてしまいます。だから、「昨日雨が降ったから大丈夫」という油断は通用しません。一方で、マルチとトンネルによって土壌の湿度は保たれやすい側面もあります。
水やりの目安
一番確実なのは、マルチ(畝を覆うフィルム)の下にちょっと手を入れてみて、土の乾き具合を直接確認することです。露地栽培の基本通り、「表面が乾いていたら、水をたっぷり与える」でOKです。トンネル内は湿度がこもりやすいので、水のやり過ぎ(特に夕方以降)は病気の原因にもなります。水やりはなるべく気温が上がる前の午前中に行うのがベストですね。
追肥のタイミングと目的
追肥は、いちごの生育状況に合わせて、年2回行うのが基本とされています。
- 1回目(11月中旬):「寒肥(かんごえ)」と言って、これから来る厳しい冬を越し、春に備えるための体力を株に蓄えさせるための肥料です。
- 2回目(2月中旬):「芽出し肥(めだしごえ)」と言って、春トンネルの設置(保温開始)とほぼ同時に行います。これから始まる急激な生長(促成)を力強くサポートし、スタートダッシュを決めるための重要なエネルギー補給です。
この2回の追肥を適切な時期に行うことが、春にたくさんの実をならせるための土台作りになります。
肥料焼けに絶対に注意!
いちごは根が肥料に弱く、肥料成分が直接根に触れると「肥料焼け」を起こしやすい、デリケートな植物だそうです。根が傷むと、せっかくの肥料が逆効果になってしまいます。
追肥をするときは、絶対に株元に直接かけるのではなく、株元から $10 \sim 15\mathrm{cm}$ ほど離して、マルチの外側(畝の肩)に施すのが鉄則です。マルチの裾をまくり上げてから肥料をまき、軽く土と混ぜてから戻すようにすると安全ですね。
トンネル栽培特有の病気と対策

先ほどから何度も触れていますが、トンネル内は「高温・多湿」という特殊な環境になりやすく、特定の病気が発生しやすいコンディションが整ってしまいます。
特に注意すべき3つの病気
- うどんこ病:葉や果実に白い粉を吹いたようになります。いちご栽培で最もメジャーな病気の一つで、高温・多湿(特に多湿)条件で発生しやすくなります。
- 灰色かび病:収穫間近の果実が灰色のかびに覆われて腐敗します。これが収穫期に発生すると、果実が全滅することもあり、精神的ダメージも大きいです…。
- 輪斑病(りんぱんびょう):葉に褐色の斑点ができる病気で、これも多湿条件で発生しやすくなります。
これらの病気は、すべて「多湿」と「風通しの悪さ」が大きな引き金となります。
対策の基本は、農薬に頼る前に、まずは「換気」を徹底してトンネル内の湿度を下げること。そして、枯れた葉やランナーをこまめに取り除き、株元の風通しを良くしておくこと。これが農薬以上に重要な最大の予防策になりますね。
もし発生が見られてしまったら、初期段階で被害葉を取り除き、拡大を防ぐために、いちごに登録がある(=使っても安全だと認められている)薬剤での予防的な散布を検討するのが良いかと思います。
注意すべき害虫(ハダニ・アブラムシ)

病気とは逆に、「高温・乾燥」を好む害虫もいます。これがやっかいなところです。
- アブラムシ:言わずと知れた害虫ですね。新芽や葉裏にくっついて汁を吸います。
- ハダニ:非常に小さく(0.5mm程度)、葉裏に寄生して汁を吸います。被害が進むと葉が白っぽくカスリ状になります。
トンネル内は、これらの害虫の天敵(テントウムシなど)が入り込みにくい閉鎖的な環境です。そのため、一度発生すると(特に換気で乾燥しすぎた場合など)、天敵不在の環境で爆発的に増殖することがあるそうです。
対策は、換気と同時に、こまめに「葉裏」をチェックする習慣をつけること。早期発見・早期駆除が鍵となります。アブラムシはテープでくっつけて取ったり、ハダニは霧吹きで水をかける(ハダニは水を嫌う)といった物理的な対策も有効ですね。
ナメクジ対策とおすすめの薬剤

トンネルで上を覆っていても、地面を這ってくるナメクジは防げません。せっかく赤く色づいた一番果を食べられると、本当にショックですよね…。
ナメクジ対策には、ビールで誘引する方法などもありますが、やはり駆除剤を使うのが手っ取り早いかなと思います。ただ、ここで本当に注意したいのが、いちご栽培で使う薬剤の選び方です。
4月以降は、ミツバチに受粉してもらわないと、まともな実が採れません。だから、受粉を手伝ってくれるミツバチに害のない薬剤を選ぶことが、戦略的にとても重要になってきます。
【戦略的】ナメクジ駆除剤の選び方
いちご栽培に登録があるナメクジ駆除剤には、主に2つの有効成分があるみたいです。
- メタアルデヒド(例:ナメナイトなど)これは昔からある成分で、効果は高いそうですが、犬や猫などのペットに対して有毒であることが知られています。ミツバチへの影響もゼロではない可能性があり、注意が必要です。
- 燐酸第二鉄水和物(例:スラゴ、ナメトールなど)こちらは比較的あたらしい成分で、有機JAS(オーガニック栽培)でも使えることが認められています。そして何より、「ミツバチや天敵昆虫への影響が少なく、IPM(総合的病害虫管理)に適しています。」と、メーカー(出典:バイエル クロップサイエンス株式会社)も公式に発表しているのが大きなポイントです。
この点を考えると、大切な受粉パートナーであるミツバチを守り、安心して収穫を迎えるためにも、いちごのナメクジ駆除剤は「スラゴ」や「ナメトール」を選ぶのが、論理的で安心な選択かなと僕は思います。
使うときは、イチゴの実に粒剤が付かないよう、株元にパラパラとまいておくと良いですね。
成功するいちごの露地栽培 トンネル

ここまで、いちごの露地トンネル栽培について、僕が学んだことを深掘りしてまとめてきました。
調べてみて改めてわかったのは、トンネル栽培は「設置したら楽になる魔法の道具」ではなく、「より積極的に環境を管理するための技術」だということです。
特に春先のビニールトンネルは、毎日の換気作業という、正直ちょっと面倒な手間が欠かせません。でも、その手間をかけることで、露地栽培の最大の敵である霜や鳥、雨(による病気)から果実を守りつつ、収穫時期をグッと早められるという大きなメリットがあるんですよね。
成功の鍵をまとめると、
- トンネル内の多湿環境に適した「耐病性」のある品種を選ぶこと。
- 「促成」ならビニール、「省力化」なら不織布と、目的に合わせて資材を選ぶこと。
- 毎日の換気作業を実践できる「観音開き」などで設置すること。
- 「換気」を最重要作業と位置づけ、生育ステージ(保温)と受粉期(開放)で目的を切り替えること。
- ナメクジ対策などで薬剤を選ぶ際は、ミツバチへの安全性も考慮すること。
これらのポイントを押さえて、春の美味しい一番果を目指したいですね!
栽培に関するご注意
この記事で紹介した栽培方法や資材、薬剤に関する情報は、僕が個人的に調べた一般的な内容に基づいています。栽培の成果を保証するものではありません。
気候や土壌、お住まいの地域によって最適な方法は異なります。また、病害虫の対策や薬剤の使用に関しては、必ず製品のラベルや説明書をよく読み、ご自身の判断と責任において正しくご使用ください。より専門的な情報が必要な場合は、お近くのJA(農協)や園芸専門の指導員にご相談されることをおすすめします。

