
ふと庭や道端に目をやると、小さい紫の花を咲かせた雑草が気になったことはありませんか。「この可愛らしい花はなんだろう」「もしかして、放置すると大変なことになる雑草?」と疑問に思う方も多いでしょう。可憐な見た目とは裏腹に、驚異的な繁殖力を持つ外来種である可能性も少なくありません。
この記事では、「雑草 紫の花 小さい」というキーワードでお探しの方のために、春、初夏、夏、秋といった季節ごとに見られる代表的な種類を一覧で紹介します。背が高いタイプのものから、地面を這うように広がるものまで、その特徴を分かりやすい紫色の花図鑑としてまとめました。それぞれの見分け方や、放置した場合のリスク、特に注意すべき外来種についても詳しく解説していきます。
記事のポイント
- 季節ごとに見られる小さい紫の花の雑草がわかる
- 似ている雑草の具体的な見分け方を学べる
- 特に注意が必要な外来種について知れる
- 雑草の基本的な対処法が理解できる
雑草で紫の花が小さい種類【季節別】
- 春に咲く紫色の雑草
- 初夏に見られる花の種類
- 夏に咲く紫色の雑草
- 秋に咲く花の特徴とは
- 要注意の外来種マツバウンラン
春に咲く紫色の雑草

春は、多くの雑草が一斉に花を咲かせる季節です。特に紫色の小さい花は、日当たりの良い道端や畑のあぜ道などでよく見かけます。これらは冬を越した「越年草」であることが多く、他の植物が本格的に成長する前に素早く花を咲かせて種子を残す戦略をとっています。
代表的なものには、ホトケノザやヒメオドリコソウがあります。これらはシソ科の植物で、見た目がよく似ていますが、葉の付き方で見分けることが可能です。ホトケノザは、茎を囲むように丸い葉が段々につく姿が特徴です。一方、ヒメオドリコソウは、茎の上部に赤紫がかった葉が密集し、その間にピンクがかった紫色の花を咲かせます。名前の通り、花が笠をかぶって踊る踊り子のように見えることが由来です。
また、カラスノエンドウ(標準和名:ヤハズエンドウ)も春を代表する雑草です。マメ科の植物で、赤紫色の蝶のような形をした花をつけます。つる性で他の植物に絡みつきながら成長します。マメ科の特性として、根に「根粒菌」が共生しており、空気中の窒素を土壌に固定する働きがあるため、古くから緑肥として利用される側面も持ちます。
他にも、スミレの仲間は非常に種類が多いですが、道端でよく見かけるタチツボスミレなども淡い紫色の花を咲かせます。また、田んぼのあぜ道など湿った場所を好むムラサキサギゴケも、春に目にする機会が多い紫色の花です。
補足:ホトケノザの名前の由来
ホトケノザという名前は、花の形ではなく、対になって生える葉が仏様の座る台座(蓮華座)のように見えることから名付けられました。ちなみに、農林水産省が紹介する「春の七草」の「ホトケノザ」は、本種とは別種の「コオニタビラコ」というキク科の黄色い花を咲かせる植物を指すため、混同しないよう注意が必要です。
初夏に見られる花の種類

春から初夏へ季節が移り変わる頃にも、紫色の花を咲かせる雑草が見られます。この時期は気温が上がり、雑草の生育も一層活発になります。
この時期の代表格がマツバウンランです。名前の通り松葉のように細い葉を持ち、淡い紫色で中心部が黄色い小さな花を穂状に咲かせます。その可憐な見た目から園芸種と間違われることもありますが、北米原産の帰化植物で、非常に繁殖力が強い外来種として知られています。種子が非常に小さく、風によって広範囲に散布されるため、一度侵入すると根絶が困難です。
また、アヤメ科のニワゼキショウもこの時期によく見られます。こちらも北米原産の帰化植物です。花は直径1〜2cmほどと小さいですが、鮮やかな紫色の6枚の花弁が特徴的です。日当たりの良い芝生や道端などで群生することがあり、芝生の中では背が低いため芝刈り機でも刈り残しやすく、増えやすい傾向があります。
夏に咲く紫色の雑草

日差しが強く、暑い夏の間にも、紫色の花を咲かせる雑草は存在します。この時期の雑草は、強い日差しや乾燥に耐える力を持っています。
代表的なのはウツボグサです。シソ科の在来種で、日当たりの良い山野や草地に見られます。紫色の唇形花が密集して穂状に咲く姿が特徴です。花穂の形が、武士が矢を入れる「靫(うつぼ)」に似ていることが名前の由来とされています。在来種であり、古くから薬草(漢方)として利用されてきた歴史もあります。
また、アオイ科のゼニバアオイも、春から夏にかけて淡い紫色の花を咲かせます。葉が古銭(ぜに)の形に似ていることからこの名がつきました。ヨーロッパ原産の帰化植物で、繁殖力が非常に強く、道端や空き地でよく見かける雑草の一つです。特に根が深く残りやすいため、駆除が厄介な雑草としても知られています。
繁殖力に注意
夏に見られる雑草の中には、ゼニバアオイのように非常に繁殖力が旺盛なものも多いです。花が可愛いからと放置しておくと、庭全体に広がってしまう可能性があります。特にゼニバアオイは、地上部を刈り取っても根が残っていると再生するため、駆除の際は根ごと引き抜く必要があります。見つけ次第、早めに対処することをおすすめします。
秋に咲く花の特徴とは

秋になると、春や夏に比べて花の数は減ってきますが、涼しい気候を好む紫色の花を咲かせる雑草も見られます。
例えば、アキノタムラソウはシソ科の植物で、夏から秋にかけて紫色の唇形花を穂状に咲かせます。山野や林の縁など、やや半日陰の場所で見られることが多いです。
また、タデ科のイヌタデも、一般的にはピンク色の花として知られていますが、色合いが濃く紫色に近いものもあります。小さい粒状の花が穂になって咲き、「アカマンマ」という別名で昔から親しまれてきました。この時期に実る種子は、野鳥の貴重な食料にもなっています。
秋の雑草は、春の雑草のように一斉に咲き誇るというよりは、涼しくなるにつれて点在して咲いている印象があります。他の草が枯れ始める中で、その紫色の花がかえって目立つこともあります。
秋の雑草は、夏場の草刈りなどで一度リセットされた後に再び生えてくることも多いです。種子を落とす前に処理できると、翌年の発生を抑えることにも繋がりますね。
要注意の外来種マツバウンラン

前述の通り、初夏に見られるマツバウンランは、その可憐な見た目に反して、特に注意が必要な雑草です。
北アメリカ原産の帰化植物であり、その可憐な見た目からは想像もつかないほどの強い繁殖力を持っています。一つの株から非常に多くの種子(数千粒とも言われます)をまき散らし、あっという間に生息域を広げてしまうのです。
この植物は、関東地方から九州にかけてすでに広く分布しており、在来種の生態系を脅かす可能性が懸念されています。例えば、国立環境研究所の「侵入生物データベース」によると、河川敷や草地、市街地、道路法面などに定着していると報告されています。もし庭や家の周りでマツバウンランを見かけたら、花が咲いて種子ができる前に抜き取ることを強く推奨します。
背丈は50cm近くなることもありますが、根は浅く直根性(まっすぐ伸びる)であるため、地面が湿っている時であれば、抜き取り自体は比較的容易です。
マツバウンランの危険性
マツバウンランは、専門家の間でも「やっかいな外来種」として認識されています。
- 圧倒的な繁殖力:一株あたりの種子の数が非常に多く、微細なため拡散しやすいです。
- 生態系への影響:在来の植物が生育する場所を奪い、景観を一変させてしまう可能性があります。
- 急速な分布拡大:年々、北上しているとの報告もあり、分布域が拡大しています。
庭に少ししか咲いていない段階であれば、種子が成熟する前に抜き取り、ビニール袋などで密閉して廃棄することをぜひお願いします。
雑草で紫の花が小さい種類の見分け方
- 見分け方がわかる一覧
- 詳細な紫色の花図鑑
- 背が高い雑草の例
- 似ている雑草との比較
- 雑草で紫の花が小さい種類まとめ
見分け方がわかる一覧

これまで紹介した代表的な「小さい紫の花の雑草」について、見分けるポイントを表にまとめました。庭や道端で気になった雑草がどれに該当するか、チェックしてみてください。科(分類)も併記することで、似た特徴を持つグループが分かりやすくなります。
| 雑草の名前 | 科 | 花の特徴 | 葉の特徴 | 主な生息場所 | 季節 |
|---|---|---|---|---|---|
| ホトケノザ | シソ科 | ピンク〜紫色の筒状花 | 丸い葉が茎を囲む(仏の座) | 畑、道端、日当たりの良い場所 | 春 |
| ヒメオドリコソウ | シソ科 | 淡いピンク紫の唇形花 | 上部の葉が赤紫を帯びる | 畑、道端、やや湿った場所 | 春 |
| カラスノエンドウ | マメ科 | 赤紫色の蝶形花 | 羽状複葉(小さい葉が並ぶ) | 土手、空き地、つる性で絡む | 春 |
| ムラサキサギゴケ | サギゴケ科 | 淡紫色、下唇に黄色い斑点 | 地面を這うように広がる | 田んぼのあぜ道、湿った場所 | 春 |
| マツバウンラン | オオバコ科 | 淡紫色、中心部が黄色 | 松葉のように細長い | 道端、空き地、乾いた場所 | 初夏 |
| ニワゼキショウ | アヤメ科 | 鮮やかな紫色の6弁花 | 細長く扁平(アヤメに似る) | 芝生、日当たりの良い道端 | 初夏 |
| ウツボグサ | シソ科 | 紫色の唇形花が穂状に密集 | 細長く先端がやや尖る | 山野、草地、日当たりの良い場所 | 夏 |
| ゼニバアオイ | アオイ科 | 淡い紫色の5弁花 | 丸い銭形の葉、浅い切れ込み | 道端、空き地 | 夏 |
詳細な紫色の花図鑑

特に見間違えやすい雑草について、見分けるための決定的なポイントを詳しく解説します。写真がない状況でも判別できるよう、形態的な特徴をより詳細に記述します。
ホトケノザとヒメオドリコソウ
この2種類は、生える場所も時期も似ているため混同されがちです。両方ともシソ科で、花は唇形(しんけい:唇のような形)をしています。
ホトケノザは、葉が茎をぐるりと囲むように付きます。この葉が「仏の座」の由来です。花の大きさは1.5cmほどで、色は鮮やかなピンク紫色です。茎は四角く、赤みを帯びることが多いです。高さは10〜30cm程度になります。
一方、ヒメオドリコソウは、茎の上部に葉が密集し、その葉が赤紫色を帯びるのが最大の特徴です。葉は三角形に近いハート型で、柔らかい毛に覆われています。花はホトケノザよりやや小さく、淡いピンク紫色です。高さもホトケノザと同程度です。
ムラサキサギゴケとトキワハゼ
ムラサキサギゴケは、同じく湿った場所を好み、花の形が似ているトキワハゼと間違われることがあります。どちらもかつてはゴマノハグサ科に分類されていました。
ムラサキサギゴケの方が花が大きく(1.5〜2cm程度)、色が濃い紫色です。下唇(花びらの下側)には黄色と白の斑点模様がはっきりと入っています。決定的な違いは、地面を這う「ランナー(匍匐茎)」を伸ばして増える性質があることです。
トキワハゼは、花が小さく(1cm程度)白っぽい紫色です。ムラサキサギゴケ同様に模様がありますが、全体的に色が淡いです。そして、ランナーを伸ばさず株ごとに分かれています。「トキワ(常盤)」の名前の通り、春から秋まで非常に長い期間花を咲かせ続ける点も特徴です。
見分けのポイント(詳細版)
- ホトケノザ:葉が茎を囲む「仏の座」。花は鮮やかなピンク紫。
- ヒメオドリコソウ:上部の葉が赤紫になる。全体に柔らかい毛が多い。
- ムラサキサギゴケ:花が大きく(1.5cm〜)、ランナーを伸ばして広がる。
- トキワハゼ:花が小さく(1cm〜)、ランナーを出さず株になる。開花期が非常に長い。
背が高い雑草の例

「小さい紫の花」というキーワードで検索していても、花自体は小さいものの、草丈が背が高い雑草を探している場合もあります。これらは景観に与える影響も大きくなります。
代表的なものは以下の通りです。
- マツバウンラン:前述の通り、細い茎が直立し、環境によっては50cmほどに達します。花は小さいですが、群生すると目立ちます。
- クサフジ:マメ科のつる性植物で、在来種です。他の植物に絡みつきながら1m以上に伸びることもあります。鮮やかな青紫色の花を房状に咲かせます。
- ナヨクサフジ:クサフジによく似たヨーロッパ原の外来種です。牧草や緑肥(土壌を豊かにする植物)として導入されたものが野生化しました。クサフジよりも花の房が密で、小葉の数が多い傾向があります。農研機構の資料などでも、かつては有用植物として研究されていました。
- ノアザミ:キク科の植物で、トゲのある葉が特徴です。花は球状で大きく見えますが、実際は小さな紫色の花の集合体です。草丈は50cm〜1m程度になります。春に咲くアザミはほとんどが本種です。
似ている雑草との比較

他にも、紫色の花を咲かせる雑草は多数存在します。見分けが難しいものの代表例をいくつか追加します。
カキドオシはシソ科で、春に淡い紫色の花を咲かせます。地面を這うようにつるを伸ばす姿が特徴で、葉をこすると独特の香りがあります。「垣根を通す」ほど繁殖力が強いことからこの名が付きました。
同じシソ科で地面に張り付くように生えるキランソウ(別名:ジゴクノカマノフタ)と生え方が似ていますが、キランソウは濃い紫色の花を地面すれすれに咲かせ、葉はより光沢があり硬い印象です。
また、ムラサキカタバミは、カタバミ科の外来種で、鮮やかなピンクがかった紫色の5弁花を咲かせます。ハート型の3枚の葉(クローバーに似ている)が特徴です。こちらは種子だけでなく、地中に小さな球根(鱗茎)を多数作って爆発的に増えます。このため、環境省の「生態系被害防止外来種リスト」にも掲載されており、駆除が非常に困難な雑草として知られています。(出典:環境省「生態系被害防止外来種リスト」)
香りで分かるカキドオシ
カキドオシは、シソ科特有の強い香り(ミントに似た香り)があります。葉を少しこすってみると、他の雑草と簡単に見分けがつく場合があります。この香りはハーブとしても利用された歴史があります。
雑草で紫の花が小さい種類まとめ

最後に、この記事で解説した「小さい紫の花の雑草」に関する要点をリスト形式でまとめます。雑草対策は、まず相手を知ることから始まります。この記事がその一助となれば幸いです。
- 小さい紫の花の雑草は季節ごとに様々な種類が見られる
- 春はホトケノザやヒメオドリコソウが代表的
- ホトケノザは葉が茎を囲む「仏の座」が特徴
- ヒメオドリコソウは上部の葉が赤紫を帯びる
- カラスノエンドウは赤紫の蝶形花をつけるマメ科の植物
- ムラサキサギゴケは湿った場所を好みランナーで増える
- 初夏にはマツバウンランやニワゼキショウが見られる
- マツバウンランは非常に繁殖力が強い要注意外来種
- マツバウンランは見つけたら種子ができる前の駆除が推奨される
- 夏には在来種のウツボグサや外来種のゼニバアオイが見られる
- 秋にはアキノタムラソウやイヌタデなどが見られる
- 見分ける際は花の色や形だけでなく葉の特徴や生え方(ランナーの有無など)も重要
- 背が高い雑草としてクサフジやノアザミなどがある
- カキドオシは独特の香りで判別できることがある
- ムラサキカタバミは球根で増えるため駆除が困難な外来種である
- 見た目が可愛らしくても雑草は早めの対処が肝心

